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8.濃音の子音と子音字
8.濃音の子音と子音字
 朝鮮語には、日本語で言うところの清音に二つの系統があると言うこともできなくはなさそうです。
一つは激音、もう一つが濃音です。濃音は、硬音と呼ぶこともあります。
何が濃いのか、何が硬いのかと言えば、発声する際の喉の緊張具合、発声された音そのものの雰囲気が、濃く硬い、ということでしょうか。

 この濃音も、激音と同様に濁りません。語頭でも語中でも常に濁らず喉を緊張させて発音されます。激音と違って呼気は激しく出ません。その印として同じ子音字を二つ並べた字形となっています。
喉の奥にあって、肺から出て来る空気の量や、出るタイミングなどを調節する部分が声門です。
例えば、「あ~ぁ」と大きなアクビをする時はおおむね声門は大きく開いています。声門に緊張はありません。
また、驚いた時などは瞬間的に「あっ!」と声が出ますが、その際に声門は発声の一瞬前にピタッと閉じています。この声はアクビの声より甲高く、硬い感じで聞こえるはずです。この、声門が閉じて出る音が濃音に当たるでしょうか。
[ ʔ ] は「声門が閉じて出る音」という意味の発音記号です。

日本語話者の発声にも濃音相当の音は頻繁に見受けられます。小さな「ッ」を一拍おいて「ッカ・ッタ・ッパ・ッサ・ッチャ」と発音するとうまくいく人もいます。まずは、ちょっと力んでみることから始めましょう。

母音字
子音字
[ a ] [ i ] [ u ] [ ɯ ] [ e ] [ ɛ ] [ o ] [ ɔ ]
ッカ行   ッカ ッキ ック ック ッケ ッケ ッコ ッコ
[ ʔk ] [ ʔka ] [ ʔki ] [ ʔku ] [ ʔkɯ ] [ ʔke ] [ ʔkɛ ] [ ʔko ] [ ʔkɔ ]
ッタ行   ッタ ッティ ットゥ ットゥ ッテ ッテ ット ット
[ ʔt ] [ ʔta ] [ ʔti ] [ ʔtu ] [ ʔtɯ ] [ ʔte ] [ ʔtɛ ] [ ʔto ] [ ʔtɔ ]
ッパ行   ッパ ッピ ップ ップ ッペ ッペ ッポ ッポ
[ ʔp ] [ ʔpa ] [ ʔpi ] [ ʔpu ] [ ʔpɯ ] [ ʔpe ] [ ʔpɛ ] [ ʔpo ] [ ʔpɔ ]
ッサ行   ッサ ッシ ッス ッス ッセ ッセ ッソ ッソ
[ ʔs / ʔʃ ] [ ʔsa ] [ ʔʃi ] [ ʔsu ] [ ʔsɯ ] [ ʔse ] [ ʔsɛ ] [ ʔso ] [ ʔsɔ ]
ッチャ行   ッチャ ッチ ッチュ ッチュ ッチェ ッチェ ッチョ ッチョ
[ ʔtʃ ] [ ʔtʃa ] [ ʔtʃi ] [ ʔtʃu ] [ ʔtʃɯ ] [ ʔtʃe ] [ ʔtʃɛ ] [ ʔtʃo ] [ ʔtʃɔ ]
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  • 子音字 ㅅ [ ʔs ] は、母音 [ i ] の前では [ ʔʃ ] となります。「 씨 」は 「 ッシ [ ʔʃi ] 」と発音します。「 ッスィ [ ʔsi ] 」ではありません。
  • カキクケコと言ってみましょう。これを五文字の単語として見ると、二文字目以降のキクケコは濁音になっていないので、朝鮮語話者の耳には、키・크・케・커 のように激音で聞こえるか、끼・끄・께・꺼 と濃音で聞こえるかします。
    呼気の出が多い清音が激音、呼気の出があまり無く喉が緊張しているのが濃音、と当て嵌めるのも一つの考え方でしょう。
    (日本語話者の「ウ段」「オ段」の発音は唇の円めが明瞭でないため、 朝鮮語話者には ㅡ [ ɯ ] 、 ㅓ [ ɔ ] として感じられることが多いようです)

母音字
子音字
    イェ イェ
   
[ ja ]   [ ju ]   [ je ] [ jɛ ] [ jo ] [ jɔ ]
ッキャ行   ッキャ   ッキュ   ッキェ ッキェ ッキョ ッキョ
   
[ ʔk ] [ ʔkja ]   [ ʔkju ]   [ ʔkje ] [ ʔkjɛ ] [ ʔkjo ] [ ʔkjɔ ]
ッティャ行   ッティャ   ッテュ   ッティェ ッティェ ッティョ ッティョ
   
[ ʔt ] [ ʔtja ]   [ ʔtju ]   [ ʔtje ] [ ʔtjɛ ] [ ʔtjo ] [ ʔtjɔ ]
ッピャ行   ッピャ   ッピュ   ッピェ ッピェ ッピョ ッピョ
   
[ ʔp ] [ ʔpja ]   [ ʔpju ]   [ ʔpje ] [ ʔpjɛ ] [ ʔpjo ] [ ʔpjɔ ]
ッシャ行   ッシャ   ッシュ   ッシェ ッシェ ッショ ッショ
   
[ ʔs / ʔʃ ] [ ʔʃa ]   [ ʔʃu ]   [ ʔʃe ] [ ʔʃɛ ] [ ʔʃo ] [ ʔʃɔ ]
ッチャ行   ッチャ   ッチュ   ッチェ ッチェ ッチョ ッチョ
   
[ ʔtʃ ] [ ʔtʃja ]   [ ʔtʃju ]   [ ʔtʃje ] [ ʔtʃjɛ ] [ ʔtʃjo ] [ ʔtʃjɔ ]
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  • 子音字 ㅆ [ ʔs ] は、ヤ行の母音の前では [ ʔʃ ]となります。「 쑈 」は 「 ッショ [ ʔʃo ] 」と発音します。
  • 子音字 ㅉ [ ʔtʃ ] にヤ行の母音字がついたものは実質的には ㅉ にア行の母音字についたものと同じ発音で構いません。

母音字
子音字
ウィ ウェ ウェ(オェ) ウェ ウォ   ウイ
 
[ wa ] [ wi ] [ we ] [ wɛ ] [ we ] [ wɔ ]   [ ɯi ]
ッKワ行   ックァ
/ッコァ
ックィ ックェ ックェ
/ッコェ
ックェ ックォ   ッキ
 
[ ʔk ] [ ʔkwa ] [ ʔkwi ] [ ʔkwe ] [ ʔkwɛ ] [ ʔkwe ] [ ʔkwɔ ]   [ ʔki ]
ッTワ行   ットヮ
/ットァ
ットゥィ ットゥェ ットゥェ
/ットェ
ットゥェ ットゥォ   ッティ
 
[ ʔt ] [ ʔtwa ] [ ʔtwi ] [ ʔtwe ] [ ʔtwɛ ] [ ʔtwe ] [ ʔtwɔ ]   [ ʔti ]
ッPワ行   ップヮ
/ッポァ
ップィ ップェ ップェ
/ッポェ
ップェ ップォ   ッピ
 
[ ʔp ] [ ʔpwa ] [ ʔpwi ] [ ʔpwe ] [ ʔpwɛ ] [ ʔpwe ] [ ʔpwɔ ]   [ ʔpi ]
ッSワ行   ッソァ ッシュィ ッスェ ッスェ
/ッソェ
ッスェ ッスォ   ッシ
 
[ ʔs / ʔʃ ] [ ʔswa ] [ ʔʃwi ] [ ʔswe ] [ ʔswɛ ] [ ʔswe ] [ ʔswɔ ]   [ ʔʃi ]
ッCHワ行   ッチュヮ
/ッチョァ
ッチュィ ッチュェ ッチュェ
/ッチョェ
ッチュェ ッチュォ   ッチ
 
[ ʔtʃ ] [ ʔtʃwa ] [ ʔtʃwi ] [ ʔtʃwe ] [ ʔtʃwɛ ] [ ʔtʃwe ] [ ʔtʃwɔ ]   [ ʔi ]
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ちょっと一言
 同じ人間が出している音ですから出せない音などあり得ませんが、意識して区別しているわけでない音を取り出して単独で発声するのは、慣れが必要な部分です。慣れですからいつかは出るのですが。
カラスやニワトリの鳴き声、郷ひろみ、踏切の警報音の声帯模写など、これらはどうしたってある種の甲高さを伴います。これが濃音にたいへん近い、と思います。甲高さと言うよりは声の持つ硬い雰囲気が。
濃音は、日本語の中に類字音を多く見い出すことができます。元から喉をつめて発声するタイプの人としては、往年の「オレたちひょうきん族」に出ていた頃の明石家さんま(特にブラックデビルの時など)、カンペイちゃんでーすの間寛平、故人となった夫婦漫才の鳳啓介(えー鳳啓介でございます、の「えー」がまさに声門閉鎖音)が挙げられます。古い人ばかりなので、ご自分にぴったりの濃音をみつけてください。
いずれにせよ、あまりおおげさすぎると好意をこめて笑われますが、軽蔑されることはありません。笑われても通じないよりましです。最初のうちはおおげさなくらいに練習した方がいいでしょう。
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